それぞれの立場

 秋の岩場に通っていたのはもう遠い昔のこと。年が明けて既に1月も終わろうとしている。その間にコロナ第3波が襲来して緊急事態宣言が出た。世界では感染者が1億人を超え死者も220万人以上で収拾がつかない。しかしまあ、コロナのヤツは何のためにこんなにも人間に対して牙をむくのか。

 コロナだけじゃない。100年前のスペイン風邪インフルや、黒死病と呼ばれたペストなど、過去のパンデミックでの死者は億単位のはず。人間殺して天下取ってやろうってワケじゃないはず。人間皆殺しにしたらあいつらだって生きていけないから。

 要するにウイルスはそういう生き方しか知らないのだね。乳酸菌のように上手いことやれば人間と共存できるのに。そのあたりクライマーに似てないこともない。岩登りなどという不埒な行いは地元にとって迷惑なだけだが、こちらは決して迷惑かけようとしているワケではない。

  こうやってウイルスを擬人化するとあいつらは生物じゃないと学者さんに怒られそう。でもペスト菌は生物でウイルスは違うというのは学者さんの決め事で、生活者の感覚でいえばウイルスは生きてるよ。神の視点からは人間もペスト菌もウイルスも自らの遺伝子を残そうとうごめいてるだけ、似たり寄ったりじゃないか。

 クライマーは人間であってサルじゃないが、サルも人間も大して違わない。ついでにウイルスもそう。みんなそれぞれの立場で何とかかんとか頑張ってる。ただコロナの頑張りが人間様には都合が悪い。人間の都合で他の生物が動いてくれるワケじゃない。

 そういう意味ではクライマーは地元にとってコロナと同じ、不都合な害獣のみたいなものだね。